カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「ゴールド免許を馬鹿にするな!」



 免許証を見せびらかしてみた。
 ゴールド免許だから優秀というわけではないけど、屋島さんはダメージ受けている様子なので満足。



「ささ。屋島さんは助手席へ!」



 不服そうな顔をしながらも屋島さんは助手席に座る。



「樹さんは免許ブルー? 実はゴールド?」



 屋島さんは黙ってシートベルトを締める。
 ただの雑談のつもりで聞いたけど返事がない。



「ねえ、聞いてる?」

「グリーンだ」

「は?」



 聞き間違いかと思った。



「だから、初心者……」



 照れたように正直にカミングアウトした。少しだけ可愛いと思ったが、すぐに笑いが止まらなくなる。



「嘘! ふふっ」



 悪いと思っているけど笑いが止まらない。本当に大爆笑だった。



「いいから、早く車を出せ!」



 怒り出した。そりゃそうだと思いながらも、これまで受けた雑な扱いを思うと仕返ししたくなる。



「なんで? 免許なかったの?」



 素朴な疑問だ。

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