カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 何で疑問形なんだ。ちらりと睨みつけるが屋島さんはまだ外を見たままだ。



「店長がそんな奴じゃないのはわかってるよ。そもそも店長を困らせるようなことはしない」

「信じてるのね」

「だから、店長なんだろ」



 あんまり誇らしげに言うので少し妬ける。


 夏彦さんがカフェ雑貨はぴねすを始めた時、雇われた最初の人が屋島さんだと言っていたことを思い出す。



「ま。連れ込むにしても、もっとマトモな女にするだろうな」

「は!?」

「麗も間に受けるな。あんなんで脅したって遊びにもならない。暇つぶしだ」



 仕返しだ。初心者免許を馬鹿にしたから、仕返ししているのだ。ちっさい男だな、樹め。


 ふと疑問に思い屋島さんを一瞥した。思い切って聞いてみる。



「いきなり市場に連れてくることなかったんじゃない?」

「どうせ暇なんだろ」

「いや。そういう問題じゃなくてさ……」



 説明しようとしたが諦めた。何を言ってもスパッと一刀両断されてしまいそうだ。

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