カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「パティシエ!?」
彼はそう叫んだかと思うと、早足にわたしの前からいなくなった。
これ、やっちゃったな。
余計なことを言い過ぎた。きっと傷つけてしまったんだ。
ため息をつきながら、目の前のスイーツたちを片付けていく。かきこむように食べたから、味が混ざってよくわからない。
でも、とにかくここから早く消えたかった。
「ごちそうさまでした」
よし、あとはお会計を済ませれば終わる。
わたしの失態をすぐにでも忘れてもらわなきゃ!
「待ってください!」
荷物の準備をして立ち上がったと同時。塩谷くんに呼び止められる。
何か必死で、思わずたじろいでしまう。
「こちらへ! さあ!!」
「え、え? え!?」
わたしは塩谷くんにがしっと音がしそうなほどに腕を掴まれ、そのまま抵抗する間もなく引っ張られた。