カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「ちょっと!?」



 どこへ行こうとしているのかわからず、混乱して声を上げれば、何人かの客に振り向かれる。


 恥ずかしさのあまり、口を噤んでしまった。


 そんなことお構いなしで、彼は絶対に客が入ってはならないであろう奥の厨房横を通り、通路を抜け、一つのドアの前まできた。


 またぐいっと引っ張られ転びそうになったところで、やっと手が離れる。



「そこに座ってください」



 気づいたら開けられていたドアの向こう。無理やり座らされたのはパイプ椅子。


 白塗りの壁には紙がいっぱい貼られている。
 どう見ても店に関するもので、わたしは見てはいけないはず。


 きっちり並べられたロッカー。素っ気ないテーブルや小さな冷蔵庫と電子レンジ。


 これは従業員の控え室とか、休憩室とか、事務所みたいな場所だよね。
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