カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 奥にパソコンがあり、一人の男性がカタカタと何かを打ち込んでいた。



「じゃ、店長! よろしくお願いします!!」

「へ? 店長? ちょっと待って」



 今度は逆に塩谷くんの腕を引っ張っていた。



「これ、何!?」

「大丈夫です。店長、すぐに作業終わるから」

「いや、そうじゃなくて」



 わたしの力及ばず、塩谷くんは簡単にわたしの手を振りほどく。


 何のことかさっぱりわからないのに、塩谷くんは事務所から出ていってしまった。
 静かな空間に取り残されて、非常に気まずい時間が訪れる。


 時計が時を刻む音が響く。重ねてパソコンのタイピング音がより緊張を誘った。


 わたし、何かしたの? 
 店長の前まで連れてこられたってことは、もしかして警察に通報されちゃう?

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