カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

人生どん底の日



   ◇


 二十八歳のいい大人が、子供みたいに泣き出せば慌てるに決まっている。


 全部、わたしが悪いのはわかっているけれど、涙は止まってくれないし申し訳ない気持ちがいっぱいで、とにかく説明しなきゃと思った。


 でも店長さんは泣き出したわたしを見て驚きもせず、慌てもせず、事務所を出て行ってしまった。


 あきれて行ってしまったんだろう。


 こんなことになるなら、カフェでランチしなければ良かった。


 わたしは今、人生でどん底の運気に違いない。


 いつの間にか店長さんが戻ってきていて、隣にはさっきの塩谷くんがいた。


 店長さんは無表情で威圧感がある。やっぱり怖い。



「何ですか? 店長!」



 無言でわたしの前に突き出される塩谷くん。
 逃げ出すと思って応援を呼んだのかな。


 もう覆せないんだ。わたし、この店では犯人なんだ。

< 29 / 167 >

この作品をシェア

pagetop