カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
人生どん底の日
◇
二十八歳のいい大人が、子供みたいに泣き出せば慌てるに決まっている。
全部、わたしが悪いのはわかっているけれど、涙は止まってくれないし申し訳ない気持ちがいっぱいで、とにかく説明しなきゃと思った。
でも店長さんは泣き出したわたしを見て驚きもせず、慌てもせず、事務所を出て行ってしまった。
あきれて行ってしまったんだろう。
こんなことになるなら、カフェでランチしなければ良かった。
わたしは今、人生でどん底の運気に違いない。
いつの間にか店長さんが戻ってきていて、隣にはさっきの塩谷くんがいた。
店長さんは無表情で威圧感がある。やっぱり怖い。
「何ですか? 店長!」
無言でわたしの前に突き出される塩谷くん。
逃げ出すと思って応援を呼んだのかな。
もう覆せないんだ。わたし、この店では犯人なんだ。