カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「て、店長?」



 引きつった笑顔で夏彦に話しかけたのは、男子高校生。自転車から降りておずおずと近づく。



「おはよう」

「お、おはようございます」



 それきり、夏彦は黙ってまた立ち続けていた。



「あの、何してるんですか?」

「……早いな。三条くん」

「店長。そこに無言で立ってると怖いです」

「……そうか」



 反応の薄さに、三条と呼ばれた高校生はため息をついた。



「で、何してるんですか?」

「聞きたいことがある」

「誰に? 何を?」

「……これ」



 彼は指をさす方向を見る。先程、夏彦が貼っていた紙だった。



「それ!」

「……アルバイトを募集する」


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