カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「わたし、普通のOLなんですよ。ただ、あそこを歩いてたのは……ショックなことが……あって」
頼んでもいないのに話し出したから、さすがに驚いたみたい。
店長さんは無言で椅子に座った。塩谷くんは顔を交互に見て慌て出す。
「でも、OLだったのは午前中までで……やっと大手企業に就職したのにわたし、二十八歳って中途半端な時に……わたし……うわぁぁん!!」
塩谷くんがバタバタし出したかと思うと、その手には畳まれたタオルがあり、そっと差し出してくれた。
接客をいつもしているだけあって、優しくて丁寧。
「ありがとう……」
店長さんはまだ無言。
やっぱり怒っているのかな。店でトラブル起きたら困るもんね。通常業務出来なくて、イライラして当然。