カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「塩谷くん」
店長さんがたしなめるように声をかけると、塩谷くんは黙る。でも、我慢出来なくなったのかすぐに喋り出す。
「いい機会じゃないですか! もうお客様にスイーツの説明するの心苦しくて」
「ん……」
「そろそろカフェらしくしましょうよ! このままじゃ、定食屋になっちゃいますよ?」
「んー」
「だから、女性のアルバイト募集したんじゃないんですか?」
「ん」
店長さん、さっきから「ん」しか言っていないけど、会話が成立しているのがすごい。塩谷くんのグイグイいく感じもすごいけど。
二人の温度差がすごくて、わたしは一体どうしたらいいんだろう。というか、何が言いたいのかな?
「実はスイーツやってないの、店長が原因で」
「店長さん……が?」
理由を聞いてもいいんだろうか。さっきから表情が変わらなくて怖いんだけど。聞いたら、怒るかな。