カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「塩谷くん」



 店長さんがたしなめるように声をかけると、塩谷くんは黙る。でも、我慢出来なくなったのかすぐに喋り出す。



「いい機会じゃないですか! もうお客様にスイーツの説明するの心苦しくて」

「ん……」

「そろそろカフェらしくしましょうよ! このままじゃ、定食屋になっちゃいますよ?」

「んー」

「だから、女性のアルバイト募集したんじゃないんですか?」

「ん」



 店長さん、さっきから「ん」しか言っていないけど、会話が成立しているのがすごい。塩谷くんのグイグイいく感じもすごいけど。


 二人の温度差がすごくて、わたしは一体どうしたらいいんだろう。というか、何が言いたいのかな?



「実はスイーツやってないの、店長が原因で」

「店長さん……が?」



 理由を聞いてもいいんだろうか。さっきから表情が変わらなくて怖いんだけど。聞いたら、怒るかな。

< 34 / 167 >

この作品をシェア

pagetop