カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「ここの店長をしている国分《こくぶ》夏彦《なつひこ》だ。君は今朝、仕事を失ったと……その、不倫事件で」
はっきりと、まっすぐに言われた。確かにわたしは不倫事件の中心人物だけど、そんなにはっきり言わなくても……。
また泣きたくなった。部長の顔と奥さんの顔が交互に思い出されて、切なくなってくる。
「ずっとスイーツはやっていなかった」
「……そうですか」
だから、その理由は何だろう。
「俺は君が欲しい」
「へ?」
予想しなかった言葉に、枯れきった心が潤いを取り戻したかのように高鳴る。
何これ。