カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 どうやらわたしを警察に突き出すつもりはないみたい。
 安心して、脱力して、今まで泣いたことが馬鹿みたいに思えてきた。



「あ。僕は仕事に戻りますね」



 塩谷くんがそう言ってドアを開ける。


 結局、塩谷くんが何も説明しないことがそもそもの原因なんだけど。事務所にまで連れてこられて、勘違いして当然だと思う。



「あの……いきなりで、何だかよくわからなくて」



 さっきまでランチを食べていたはずが、いきなり事務所で面接みたいなことになってる。信じられない展開だ。



「少し、昔話を聞いてくれないか」



 わたしが黙ったままでいると、それまで無口だった店長さんが喋り出した。
 人が変わったように、カフェ雑貨はぴねすについて語り出す。

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