カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


「元々、店は俺一人で始めた」



 最初は雑貨しか置かない店だったという。


 仕入れが良かったのか、出店した場所が良かったのか、お客さんに恵まれて繁盛していたらしい。



「一人では手が回らなくなって、アルバイトを雇った」



 それが今、キッチンに立っている男だと店長さんが淡々と説明した。


 あの美味しいランチはその人が作ったんだと思ったら、すぐにでも会いたい気持ちになる。でも、今は我慢。



「彼がカフェをやらないかと、提案してくれた」



 その気はなかったけれど、押し切られる形で今のカフェ雑貨店へと改装した。


 押し切られたと言っても、彼はキッチンに立てるだけの経験と資格があった。だからこそ店長さんは安心してカフェを始めることが出来た。

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