カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
落ち込みディナー
◇
それからどうやって家に帰ったかは覚えていない。
まだ契約中の社宅の部屋に入れば、いつも通り殺風景な部屋が迎えてくれる。
女性の部屋とは思えないそこは、わたしが必死で働いていた証拠かもしれない。
住む場所にまで手が回らないというか、安いカプセルホテルのように寝るだけの場所になっていた。
スーツのままベッドの上に座れば、濃い一日が蘇る。
その時、スマホが鳴り始めてドキリとした。
まさか、会社?
カフェ雑貨はぴねす? そうだったら嬉しいんだけど。
「……違う」
画面に出る母の文字。
出たくない。でも出ないと会社にまでかけてくる心配性だから出るか。仕方ない。
とにかく、まだ会社辞めたことは黙っておこう。