カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「あ。麗さんじゃないですか!」
席に座ってすぐに、駆け寄ってくる元気な声の主。塩谷くんだ。
「塩谷くん」
「瞬でいいですって!」
「じゃあ、瞬くん。今日は仕事終わり?」
「さっき終わったばかりで。今日は?」
「あ。履歴書を届けに」
そんな会話をしていると、横にいた童顔高校生が瞬くんの肩に手を置く。
並んでみれば、瞬くんの方が背が低い。最近の高校生は本当に背が高い。一八〇くらいはあるかな。
「瞬さん。知り合いですか?」
「驚け、陽希! 彼女が今度入るパティシエさんだ!」
「噂の大食いパティシエさん!?」
どんな紹介をして、どんな噂が広まっているのだろう。わたしのイメージ、最悪じゃないの?