カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「あの、ぼくは三条陽希《さんじょう はるき》です。十六歳」
可愛らしく陽希くんが自己紹介。
弟はいないけれど、いたらこんな感じなのだろうかと笑顔になれる。癒しだ。
「天瀬麗です。来週からよろしくお願いしますね」
「はい!」
「ところで夏彦さんは事務所の方にいるの?」
すぐに返事が返ってくると思って待っていたわたし。しかし返事がなくて顔を上げた。
そこには固まった二人の姿。
「何?」
瞬くんと陽希くんは顔を見合わせ、何やら頷き合っている。
「何でもないです」
「そう、何でもないです」
陽希くんが言ったことをそのまま繰り返す瞬くん。
何かがあるって丸わかりなんですけど?
じっと二人を睨みつけてみると、なぜかそっぽを向いてしまう。