カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「はう!?」



 思いもよらない事態に、わたしの声が裏返る。


 確かに店は混んでいる。陽希くんが動き回っているのを見たら、あきらかにそうだ。
 入り口近くには席が空くのを待つ人がいる。満席だ。


 だからって、知らないうちにわたしは相席をしていたの!?



「夏彦さん! いつから?」



 目の前に夏彦さんが座っている。しかも珈琲を飲んでくつろいでいる。


 うわずった声が耳に届いたのか、夏彦さんは珈琲カップを静かに置く。



「うん」



 答えになっていない。



「あ、あの」

「うん」



 食べているところをずっと見られていたのかもしれない。そう思うと恥ずかしさで顔が見られない。


 いつから? いつから、いたの!? 無言で……いないでよぉ。

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