カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
それから夏彦さんはじっとわたしを見つめる。ゆっくり数えて十秒ほどしてから、やっと口を開いた。
「ディナーメニューはどうだった?」
「はい。とても美味しかったです!」
「詳しく」
「へ……はい、あの。グレイビーソースが全部の食材と相性が良くて、言うことなしってくらい美味しかったです!」
そしてまた夏彦さんは見つめてくる。
わたしとしては目の前で夏彦さんが珈琲タイムしていた理由を聞きたかったけれど、とにかく素直に感想を言う。
見れば夏彦さんがすごく嬉しそうにしている。
「後で屋島さんでしたよね、シェフ。感想を伝えます」
「うん」