カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

混乱バスタイム



   ◇


 髪の毛を洗い、身体を洗い、洗顔して、湯船に浸かった。足を伸ばし、程よく広いお風呂の水面を見つめながらため息。


 どうしてこうなってしまったのか、わたしはひたすら考える。


 風呂場を眺めれば、男性もののシャンプー類。石鹸。かかっているタオルも男性っぽいブルー。
 その隣に新しく用意してくれた白いタオル。


 性格そのものを表したように、きっちり整頓されている。毎日、掃除をしているのかもしれない。


 隅から隅まで綺麗すぎて、少し居心地が悪い。
 シャンプーして落ちてしまった髪の毛は自分で回収しよう。広範囲に水が跳ねないように注意しなくちゃ。


 緊張する。
 どういう顔をして出ていけばいいの? 


 だってここは、夏彦さんが住んでいるマンション……。



「えっと、はぴねすでご飯食べて。それで、夏彦さんが目の前にいて……」



 何度それを回想したんだろう。でも有り得ないことばかりで、夢ではないかと思ってしまう。


 それは多分、二時間ほど前。いや、二時間も経ってないかも。一時間半……とにかく、わたしは夏彦さんと歩いていた。
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