カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
***
「行こうか」
「へ?」
どこへ行くのかと問う前に歩き出してしまった。
改めて聞くのも悪い気がして、店長だけに何か考えがあるんだろうって結論に達した。
背の高い後ろ姿を見つめていたら、不意に振り向いてわたしの持っていたボストンバッグを強引に持ってしまう。
「夏彦さん! そこまでしてもらっちゃ、悪いです」
聞いていないのか、夏彦さんはまた無言で歩き出す。だからか、どう話していいかわからなくて、行き場所も聞けない。
今、夏彦さんはどこへ向かっているの?
そんなことを不安になりながら考えていると、
「荷物、重そうだったから」
夏彦さんが急に答えた。
遅っ! さっきの答えだよね?
いやいや。答えるの遅いから! びっくりするよ。