カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
気がつけばカフェ雑貨はぴねすから、ちょうど裏手側にいた。
そこはマンションが立ち並ぶ団地街っぽい。
え、この辺のセレブが住む場所? でも中古マンションらしきものもあるし、セレブとは言い切れないか。
整った中庭なんか見てたらやっぱりお金かかってそうな場所。
周りには公園やランニングコースもあって、憩いの場にもってこい。
ここで珈琲飲みながらまったりしたい。
わたしには無理。住んでみたいけど、こんな素敵な場所に住める余裕ない。
街灯に照らされた道をひたすら歩いて、あるマンションの前に夏彦さんは立ち止まる。
「ここ」
「へ?」
「俺の住んでいるマンション」
「夏彦さん。マンションに住んでるってすごいですね。わたし、憧れです」
会話が続かない。
夏彦さん、マンションに住んでるんだ。
すごい。というか、さすがと言うべき? やっぱり店長やってるだけある。