カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
カフェ雑貨はぴねすも流行っているみたいだし、味は美味しいし、宣伝もなくお客さんが来るって本当にすごいことだと思う。
でも四十歳くらいになったらマンションとか持ち家は当たり前なの? え。勝手に四十代とか思ってたけど、夏彦さんって何歳?
というか、どうして夏彦さんは自分の住むマンションを見せてくれたの?
思い切って聞こう。よく分からないけど、伝えなきゃ誤解が生まれる。頑張ろう。
「あの!」
覚悟を決めて聞こうとした時、すでに夏彦さんは中のエレベーター前。
「え、え。待って。夏彦さん?」
何やら待たれている様子。荷物は夏彦さんが持っているし、このまま帰るわけにはいかないし、どうする? どうするの、麗!
「夏彦さん!」
走って隣に並ぶと、すぐにエレベーターのドアが開く。
また、聞けなくなってしまった。