カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「おかえり」

 そんなふうに声をかけられ、

「ただいま」

 と普通に返事をしてしまった。



 家族みたいで恥ずかしくなる。


 しかも風呂上がりスタイル。しっかりパジャマを着るタイプなんだと紺色に身を包んだ夏彦さんを見つめてしまった。


 きっちり後ろに撫で付けた髪型ではなく、前髪が目にかかりそうなくらい長くて、思わずドキッとしてしまう。


 意外な姿を目にすると、心を持っていかれそうになる。ギャップに弱い。
 さっきからそうやって惑わされてばかり。しっかりしなきゃ。



「メロンソーダ、好き?」

「え。は、はい。好き、です」



 とにかく早くどこか落ち着くホテルにでも行かなきゃ。随分と遅くなってしまったし、空いてたらいいんだけれど。


 まずは、夏彦さんがマンションまで案内した理由を聞こう。

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