カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「寝室はあっちだから」
夏彦さんがリビングの奥を指さした。
え? 寝室? 寝室って言いましたか!?
狼狽えたせいで、メロンソーダのペットボトルを落としてしまう。
「荷物も運んであるから」
何も言わずに拾ったペットボトルを渡された。
荷物を運んでくれた夏彦さんに感謝するべきなんだろうか。いや、ちょっと待って。少し状況が違う。
「俺は隣の部屋で寝るから」
そう言って去っていこうとする夏彦さんの手をわたしは掴んだ。
「待ってください。夏彦さん! ちゃんと説明してください」
「ん?」
まるでわかっていない夏彦さんに、戸惑いながら話す。
「あの、何でわたしをここに連れてきたんですか?」
「言ってなかった?」
全く聞いていませんと、心の中で思いながら頷く。
言葉を選ぶように夏彦さんは少し考えてから、じっと見つめてきた。