カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「何か申し訳ない」
時々、何もしないのは悪い気がして夏彦さんのために食事を作る。でも気恥ずかしいんだよね、何となく。
そう思いながら、出かける準備をして玄関まで行く。そこでドアに達筆なメモがあることに気づいた。
"合い鍵。忘れないで。"
メモまで言葉数が少ない。夏彦さんらしい。
メモに貼り付けた鍵を持ってドアを開ける。きっちり鍵を閉めてから何となく自分の身だしなみをチェック。
今は簡単なシャツとパンツというラフな格好。髪は纏めて、化粧も少しだけ。
わたしは何気なく時計を見る。
「あ。まずい」
わたしは急ぎマンションを出た。
でも友達と会えたもののいい結果には結びつかず、まだしばらくは夏彦さんのマンションのお世話になりそうだった。