カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
「だいたいわかりました。それでわたしは何から始めれば……」
「ちょっと待ってて」
一度、夏彦さんが席を立つ。でも一分もしないうちに戻ってきた。
「厨房の方も見てもらうつもりでいた」
「はい!」
ついに噂のシェフと会えるんだろうか。あの美味しい料理を作るシェフに会える。一体、どんな素敵な人なんだろう。
まずは食べた感想を伝えたい。何を食べても文句なしに美味しかったことを伝えたい!
「行きたいです」
「それが……屋島くん。今日は気が立っていて」
「気が、立ってる?」
「噛み付く勢いだから、また今度」
どこの動物園なんだろう。
シェフはまさかのライオンなの?
店長である夏彦さんをも困らせるなんて。ますます、気になるじゃない。