カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

 確かに二階からは店内の様子がよく見えそう。
 しかもランチタイムの時間。雑貨コーナーに人がたくさん来ることはなさそう。



「ランチタイムでもフロアは二人なんですか?」

「うん」



 夏彦さんはすっと立ち上がって、エプロンを締め直す。



「麗ちゃん」

「はい!」

「頑張って」



 そう言われて肩を叩かれる。


 その大きな手が熱くて、優しくて、胸がザワザワする。
 頑張れなんて今まで誰にも言われたこともなかったから、泣きたくなるくらい感動。


 緊張なんてすっ飛んじゃって、仕事する前から身体が熱くなる。



「更衣室は隣。男女分かれてるから大丈夫」

「はい、着替えてきます」

「うん。俺は先に店に出るから。麗ちゃんはそのまま二階に行って。品出しの雑貨は見ればわかるから」

< 83 / 167 >

この作品をシェア

pagetop