カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
確かに二階からは店内の様子がよく見えそう。
しかもランチタイムの時間。雑貨コーナーに人がたくさん来ることはなさそう。
「ランチタイムでもフロアは二人なんですか?」
「うん」
夏彦さんはすっと立ち上がって、エプロンを締め直す。
「麗ちゃん」
「はい!」
「頑張って」
そう言われて肩を叩かれる。
その大きな手が熱くて、優しくて、胸がザワザワする。
頑張れなんて今まで誰にも言われたこともなかったから、泣きたくなるくらい感動。
緊張なんてすっ飛んじゃって、仕事する前から身体が熱くなる。
「更衣室は隣。男女分かれてるから大丈夫」
「はい、着替えてきます」
「うん。俺は先に店に出るから。麗ちゃんはそのまま二階に行って。品出しの雑貨は見ればわかるから」