カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。


 ***


 猿みたいだ。
 わたしは塩谷瞬くんの動きを見た時に、そう思った。


 ランチタイムで満席に近いはぴねすのフロア。そこで走るでもなく、歩くでもなく、程よい速さで動き回る瞬くん。


 テーブル席で注文を聞き、厨房でそれを伝える。その足で出来たメニューを客席まで運ぶ。全く隙のない動きだ。


 瞬くんははぴねすで働き始めて長いんだろうか。手慣れているというか、要領をよくわかっている。
 混雑するランチタイムだけど、瞬くんのおかげで次々にお客さんも入れ替わっていく。



「ああ見えて、すごいな」



 素直に感動してしまう。


 そんな瞬くんの活躍で、夏彦さんはカウンター席の接客に集中出来ているみたい。
 何か常連さんと話をしているけど、夏彦さんみたいな無口な人がどんな話をしているか気になる。

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