カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
わたしが雑貨を見渡していると、
「すごく、すごく! これ、気に入りました!!」
はしゃぐような声が聞こえ振り返る。
彼女さんは嬉しそうに笑っていた。それを見た彼氏さんも嬉しそう。
「よかった。これ、最後の一つなんです。クローバーピアスがお客様に出会うことが出来て、わたしも嬉しいです」
「さすがはぴねすですね。先輩が幸せそうです」
「ありがとうございます。他にも何かあればお声かけください」
出来た。接客出来た。よかった。
しかも彼氏さんの方は何度も来てくれているみたい。幻滅させないでよかった。
安心したら、どっと疲れた。
「遠野様。お席にご案内します」
その時、瞬くんが二階に顔を出す。呼ばれて返事をしたのはさっきの高校生カップルだ。
いつの間にか二人、手を繋いでる。幸せそうで何より。
わたし、幸せのお手伝い出来たのかな。
こうしてわたしはお客さんのお手伝いは出来たものの、品出しは一つもやれなかった。
やっぱり、まだまだ新人。それを実感した一日だった。