カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。
午後五時。
夏彦さんのマンションに着いて、わたしはため息。素敵なマンションに住む夏彦さんが羨ましくなった。
「おかえり」
「は……え!! 夏彦さん!!」
驚いたのは言うまでもなく、夏彦さんがマンションにいたから。
てっきり仕事中だと思っていたし、ドアを開けていきなりいるなんて思わなかった。
この脱力感溢れる顔を見られた。こんな無防備な緩んだ顔を見られて、恥ずかしいやら情けないやら。
結果、にこっと微笑んで誤魔化す。
「た、ただいま」
まだ慣れない挨拶。
可愛らしい黒猫の刺繍の入った緑のギンガムチェックエプロンをする夏彦さん。このギャップがすごすぎて、逆に微笑ましい。
似合う似合わないとかではなく、なぜそのエプロンを買ったのかが気になる。