カップほどの小さな幸せだとしても、店長が隣に居てくれるなら。

「麗ちゃん。今、お風呂沸いた。夕飯もすぐに出来る。どっちにする?」



 わたしは靴を脱ぎながら、固まってしまった。だって、それ……。
 新婚みたいだから!!


 顔が熱い。耳が熱い。
 悪い気はしないけど、恥ずかしげもなくそのセリフが言える夏彦さんってすごい。



「お風呂、入ります」

「うん」



 何やら楽しそうに歩いていく夏彦さんの背中。



「夏彦さん、仕事早めに終わったんですか?」



 わたしは急に思い出して夏彦さんに聞く。



「ん。今日は屋島くんに任せてある」



 その名前に今日のことを思い出して、切なくなる。



「夏彦さんも料理作ったりするんですよね? 二人で厨房回すのは大変じゃないんですか?」

「大丈夫」



 いや、どちらかが倒れたらやばいってのはわかる。大丈夫じゃない気がする。

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