水鏡の月
家出の終わり編
凛音が咲燐の家にお世話になった日から、10数日が経っていた。

咲燐は気にし始めていた。

「ねぇ、凛音。俺…思ったんだけどさ、1度帰ったら?」

凛音は咲燐の言葉に瞬きを2回し、きょとんとした顔で固まる。

数秒間の間が空く。

「…」

凛音は考えているようだった。
咲燐がまた話す。

「別に出ていけって事じゃないんだ。凛音、何も話さず家、飛び出して来たんでしょ?」

凛音は黙ってうんと首を縦に振る。

「だからさ、話して嫌になったらまた…来てもいいよ?でも、まだここは凛音の帰る場所じゃないから…」

凛音は静かに俯く。
咲燐は凛音の前に立ち、凛音の頭を撫でる。

慰めるように…、その姿は一瞬だけ、2人が兄妹のように思わせた。

次の日、咲燐と凛音は朝同時に家を出る。

「じゃあ、行ってきます。凛音」

「僕も、行ってきます…咲燐」

凛音はドア前の外で咲燐に抱きつく。
咲燐は黙って凛音を抱きしめる。

「話し、終わったら連絡して…。俺からも凛音に話があるから」

咲燐は凛音の耳元で囁く。
顔を真っ赤に染めて、

「僕も…」

凛音は頷きながらぼそっと言った。
咲燐は仕事に、凛音は自分の家に…。

マンションの階段を降りて2人は、別々の方向に歩いた。

咲燐は真っ直ぐ前を向いて、凛音は俯いて…。
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