最後の歌





店内は濡れた靴で来店する
お客さんがいる為、滑る。




あたしはそれに気付いて
いつもよりも
足元に気を遣っていた。





でも、余りに忙し過ぎて
店内を行ったり来たりしている内にすっかり忘れていた…。




そんな時、
カルボナーラを運んでいると滑りお客さんの服にかけてしまった。




あたしはとにかく謝った。


店長も来て何度も謝った。





どうしたらいいかわからなくて
泣きたい気分だった。







「もういいですよ。」
とお客さんが言った。




お客さんも相当怒ってるだろう…と思い、恐る恐る顔を上げた。




でも、あたしが見たのは
怒ってる顔じゃなかった。





「店員さんも早くカルボナーラを持ってこようとして滑ったから
不慮の事故ってやつ?笑」



そう言って、笑った。






その言葉と笑顔にあたしは
どれだけ救われたか。












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