黒桜~サヨナラの前に~
「最初はまだいい方だった。金も少しはあったし、母親だって優しかった。だけど……時が経つにつれ、母親一人だけが働いていても3人分の金は用意出来ないようになった。」
「母親だって、どんどん疲れがたまって、壊れていった……。」
そこであたしはみぃが震えているのに気づく。
小刻みにカタカタと。でもその震えを抑えるように自分の手で体を抱き締める。
そんなみぃを見ていられなくなって、あたしは背中をソッとさすった。
「遂に母親は完全に壊れた。あのときは何を思っていたのか分からなかったけど、来美だけを凄く可愛がってたな。でも今なら分かる。
……きっと、中学生ぐらいからキャバ嬢とかで働かせようとしてたんだろ。」
「……っ!」
皆が息を呑むのが分かる。
許せない。
みぃをこんなに傷つけて。
「俺らはそんな母親がこわくなって、逃げ出したんだ。あの家から。」
「母親は、勿論来美だけを必死の形相で追いかけてきた。」
「俺らは必死で逃げたんだ。だけどすぐに追いつかれて……俺は売り飛ばされた。そこからは今の家族でまずまず幸せに暮らしてる。来美は……分からないけど。」