黒桜~サヨナラの前に~
……そうだ。
俺には今、瑠璃南がいるんだ。いい加減アイツのことなんか忘れろ。
でも、な……
自分に暗示をかけるように頭の中で唱えて、瑠璃南を抱き締めた。
「……えぇっ!?ちょ、洋~?」
急に抱き締められたから驚いている瑠璃南。皆も話をやめてこっちをガン見している。
「……もう二度と―――――――――。」
おれがボソリと呟いたその言葉にそこにいる全員が目を見開く。
「………なんてな。驚いたか?」
作った笑顔で皆の方を見る。
「はっ?ちょ、洋~!脅かすなよ~。」
「ははっ!わりぃ」
冗談なんかじゃない。驚かしてもいない。この気持ちは、俺の本当の気持ちだ。
『独りで抱え込まないで。』
『あたしがいるよっ』
『大丈夫!洋ならいけるよ!』
いつも、いつもアイツだけが俺の気持ちに気付いてくれた。