黒桜~サヨナラの前に~
だけどもうアイツは俺の側にいない。
この気持ちの行き場も……どこにも無くなった。
……前までは自由に動いていたのに。急に目の前に壁が出来て行き止まりになったように。
前までは自由に動いていたのに。急に狭い部屋の中に閉じ込められたように。
アイツ……。舞娜とまた、笑い会いたい。
抱き締め会いたい。
キスを交わし会いたい。
ドンドン積もるこの会いたいの気持ち。
それは真っ白な雪のように溶けることは無くて、儚い桜のように散ることも無くて。
ただ、ただ、一生消えることのない大きな大きな木のようにたたずむんだ。
「会いてぇよ……」
小さく呟いた言葉は誰の耳にも届くことなく、宙に消えていった。