黒桜~サヨナラの前に~
目の前に広がる鮮明な真っ赤な血。
血独特の臭いがその場に漂っている。
「っ、来美、救急車呼べ!」
「あ……う、うん……っ!」
来美は目のふちに涙をいっぱい溜めている。だけど、それを溢すことは絶対にしない。
それが来美だから。
白は舞娜にずっと声をかけてる。
――――――ピーポーピーポー……
段々近付いてくるサイレン。そのサイレンは俺らの近くで止まった。
「連絡をくれた方はどなたですか?」
「はい……」
「少しお話を聞かせてください。」
「……はい……」
来美が話を聞かれてる間に舞娜は救急車の中に連れられていく。
「お、お願いです!ど、どうか姉貴を……っ!」
白が救急隊員の一人の腕を掴んで必死に頼んだ。
「姉貴を……、宜しくお願いします!」
深々と頭を下げる白。俺もその隣に行って、頭を下げた。