黒桜~サヨナラの前に~
この鉄壁の壁は、閉ざされたままだけれど、暗い、暗い心の中に、少しだけ光が見えた。
「俺らを信じろ。俺らは、絶対裏切らねぇ!」
……あたしに差し出された手を、いつの間にか、固く握っていた。
*
心が悲鳴をあげていた。
心の中には何も見えないほどの、真っ暗な闇が広がっていた。
あたしはそこよりももっと奥底に自分の醜い部分を隠していたんだ。
それが誰にも見付からないようにと、空よりも遥か高く、海よりも遥か広く。
丈夫な壁を造り上げた。
光も、音も、何も見えないように、何も聞こえないように。
本当のあたしもそこに隠れていた。
……誰にも見付からない………ハズだった。
鉄壁の壁は、あの人達によって、脆くなる。
『もう、怖がらなくていい。』