Kissの温度
1.はじまりはKiss
「送らなくて大丈夫か。」
タクシーに乗り込んだ彼は
私の顔を見上げたずねる。
いつものお決まりの言葉。
私の返事はわかっている。
『はい、大丈夫です。
一人で帰れますから。』
私は微笑みながら答えた。
上辺だけの笑顔…。
「そう、じゃあ気をつけて。
あっ、そうだ…」
彼は何か思い出したように
鞄をごそごそし出した。
「明日は直接客の所行くから
この書類処理頼む。」
契約書の入った封筒を
私に差し出す。
『わかりました…じゃあ…』
「ああ、また明日。」
彼が手を上げると
ドアはバタンと閉まり
タクシーは走り出した。
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