Kissの温度
私がじっと見つめていると
はっと我に返った彼は
掴んでいた手を離し
さっきまでの表情に戻る。



「もう帰るのか?」



『うん…』



「もし時間あるなら
食事でもどうかな…
その手のお詫びもかねて。」



彼は真剣な表情で
私を見つめて言うので
少しドキドキした。



『あの…ごめんなさい。
今日はこれから約束があって。
せっかく誘ってもらったのに…』



「いや、急に誘ったんだし
気にするな。また誘うよ…。」



少しの沈黙の後
再び彼が口を開いた。



「約束って…
もしかして彼氏と?」



寂しそうな目で見つめられ
私は思わず首を左右に振った。



『ううん、友達と…』



「そう…」



彼はなんだかほっとした
表情を浮かべ小さく微笑んだ。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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