Kissの温度
「…遥」
ふと本城さんが背中越しに
私の名前を呼んだ。
私は振り向かずに返事を返す。
『ん、何?』
彼は煙草を灰皿で揉み消し
ゆっくりソファに腰をおろした。
「帰る前に…ここ、座って。」
本城さんが隣りを
ぽんぽんと叩いた。
その音にゆっくり振り向き
彼の顔を見る。
なんだかいつもと違う
空気を感じながら
私は言われるままに
彼の隣に腰をおろした。
すると彼は
私の手をそっと握った。
『何?どうしたの…』
言い知れぬ不安が襲い
私は手を握り返した。
もしかして…
別れ話し……
私の中では
いつかそんな日が来る事くらい
覚悟はしていた。
ただやっぱり
実際その時が来ると…
忘れていた感情が
少し顔を出す。
胸が苦しくなった。
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