Kissの温度
私が黙ったまま
うつむいていると
肩を抱いていた手が
優しく頭を撫でる。



「愛してるよ。遥…」



耳元で優しく囁く声。



この心地いい響きと温もりに
流されてしまう自分がいる。



結局私は
本城さんの思い通りで…



彼も私が自分から離れられないと
安心しているのだろう。



本城さんは撫でていた手を止め
私の頭をゆっくり引き寄せた。



そして…



頬と唇に優しくキスをする。



でも‥‥



そのキスは
とても優しいのに‥



私には冷たく感じた。



心は寂しいままで

何も感じない

何も満たされない。



それは当たり前だった。



"愛してる…"



彼の言葉は私を一瞬
いい気分にしてくれるけど
ただそれだけで‥‥



結局私にとってなんの意味もない
言葉だった。



私は‥



私だけを愛してくれる人から
この言葉を聞きたかった…



そしたらきっと
私の心は満たされ
素直にその言葉を受け入れる
事が出来ると思うから‥‥



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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