Kissの温度
いつも通りタクシーを拾い
それに乗り込む本城さんを
私はいつものように
ドアの近くで見つめていた。



するとーー



「遥、今日は家まで送るから
一緒に乗って行きなさい。」



車内から私の顔を覗き込み
優しい笑みを浮かべながら
手を差し延べる彼。



いつものお決まりのセリフと違い
ホントに送る気があるみたいだ。



でもそれは
後ろめたさからくる言葉。



そう思ったら
私はその手を素直に掴む事が
出来なかった。



そんな優しさ
私にはいらない…



「遥…どうした?」



怪訝な表情で
本城さんは私を見つめる。



きっとこの人は
私の気持ちなんて
一生気づかない‥‥



そう思ったら
なんだか悲しくなった。



それは
本城さんに対してじゃなく…



自分はひとりぼっちなのだと
改めて感じたからだった。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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