Kissの温度

(そろそろ時間だな…)


私は帰る準備を始め
自分のカップを洗いに
給湯室へ向かった。



今日は幸いな事に、朝から
本城さんは本社へ行っていて
結局顔を合わさずに済んだ。



私は蛇口を捻りながら
大きなため息をつく。



「何そのため息は?幸せが
逃げるぞ。」



急に後ろから声をかけられ
振り向くと、神野 嵐が
入口にもたれかかり、私を
見つめていた。



『ちょっと、急に声かけるの
やめてもらえません?』



私がジロっと睨みつけると
彼はニヤリと笑う。



「ククッ、悪かった。」



楽しそうに笑う彼を無視して
私はカップを洗い始める。



「なんだ、怒ったのか?遥。」



(なんで、呼び捨てなのよ!)



『別に、怒ってませんけど。
神野さん。』



私は昨日彼に嵐って呼んでと
言われたが、わざと名字で
呼んでやった。



「ククッ、遥って面白いな。」



嵐は手で口元を覆いながら
笑っていた。



「なあ、遥。」



『なんですか?』



「今夜、暇?」



『暇じゃありません。』



「嘘つくなよ。彼氏いないくせに
予定なんかないだろ。」



(なんなの、失礼なやつ!)



『昨日のは嘘。彼氏いるから』



「えっ、マジで!」



嵐は慌てて私の横に近寄った。



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