Kissの温度
嵐は私の肩に手を置くと



「お前、まだあんな奴の事…」



『えっ!?』



「あっ、いや、何でもない。」



嵐は慌てて口をつぐむ。



(今、あんな奴とか言ってた?
まさか本城さんとの事知って…
なわけないか。)



『ちょっと、手離してよ。』



私は肩に置かれた手を
指差し言う。



「やだね。今夜付き合ってくれる
って言うまで離さない。」



だだをこねている子供のように
思えて、思わず笑ってしまった。



「なに笑ってるんだよ。」



『ふふふ、別に。』



「で?今夜付き合うのか?」



『う〜ん…いいよ。』



「ホントか?」



初めてみる嬉しそうな笑顔。



ドキッーーー



(やだ、私こんな奴になに
ドキッとしてんのよ…)



私は心の中を悟られないよう
冷静なふりをする。



『お店は私にまかせて
くれるならいいよ。』



「なんだそんなことか。
別にかまわない。」



『ねぇ、もう帰れるの?』



「ああ、俺って優秀だから
仕事はもう片付いた。」



『そっ!じゃあ行こうか。』



あえて優秀って言葉に
突っ込みを入れず、私は
給湯室を出た。



(この人って案外扱いやすい
かも…)



なんて事を考えながら。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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