Kissの温度
そのあまりにも真剣で熱い
眼差しに心が跳ねた。



(やだ、相手は亘なのに…)



『な、何でもないよ。ちょっと
仕事で息詰まって、風にあたり
たくなっただけだから…』



「ほんとに?」



『うん…』



私はごまかすように空を
見上げる。



太陽が傾き始めた空の色は
オレンジへと徐々に塗り替え
られていた。



「なぁ、遥。」



『ん?何?』



「お前、神野さんとホントに
キスしたの?」



『えっ!?』



突然の質問に大きな声が漏れた。



「もしかして、神野さんと
付き合ってんの?」



『つ、付き合ってないから!』



私は慌てて顔の前で手を
左右に振る。



「ふ~ん、付き合ってないんだ。
でも、キスしたのかよ。」



亘は私に詰め寄った。



『あ、あれは、嵐が勝手に…』



「やっぱ、したんだ…」



『あっ、えっと…』



(はぁ~結局バレた…)



フェンスまで追い詰められた私は
観念して動きを止める。



『きっとからかって楽しんでる
のよ、あの人は…』



私が苦笑いを浮かべると
亘は私を覆うようにフェンスに
両手をついた。



『亘?』



亘は頭を下げコンクリートを
じっと見つめている。



『どうしたの?』



なんだかいつもの亘らしく
なくて、胸騒ぎがした。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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