Kissの温度
私の横の席に腰を下ろしたのは
これも同期の向井 亘(ムカイワタル)。


黒髪の短髪で
笑顔が良く似合う爽やかな
体育会系。



「亘君おつかれ〜。
お昼会社にいるなんて珍しいね。外回り終わったの?」



綾はニコニコしながら
話している。
彼女は亘の事が好きなのだ。


亘は営業マンなので
この時間に会社にいる事は
あまりない。



「あ〜今日は午後からなんだ。」



ご飯をほおばりながら答えると
亘は私の方をちらっと見た。



「遥、それ食べないなら
オレが食ってやるよ。」



亘はそう言うと
私の手を掴みそのまま口元に
フォークを運ぶと巻き付いているパスタをパクっと食べた。



『ちょっと、亘!!』


「ん〜〜うまいっ!」



幸せそうな顔で
食べている亘を見ていたら
怒る気も失せた。


綾が少しむっとした顔で
私たちを見ている。


私は綾の顔を横目に
ため息を一つつくと
皿ごと亘にパスタを渡した。



『全部あげる。』


「えっ、いいの!? って遥、
ほとんど食ってないじゃん。」


『ん…食欲ないからいらない。』


「おい、大丈夫か?」



亘は心配そうに
私の顔を覗き込んだ。


そこへすかさず綾が口をはさむ。



‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥
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