最愛婚―私、すてきな旦那さまに出会いました
01. 幸せになります

「先日お会いした方、覚えてるかな? この方がね、ぜひ桃子(ももこ)ちゃんとの縁談を進めたいって」

「えっ」


とある小春日和、母方の叔父が持ってきたそんな話に、私は驚いた。


「でも叔父さま、あれは形ばかりのお見合いだって」

「そうなんだけど、先方が乗り気なのを無下に断るわけにも、ね」


都銀の副頭取をしている叔父は顔が広く、二十五歳という適齢期に入った私に、「会うだけでいいから」とお見合いの話をいくつも持ってくるようになった。

妻である叔母に「今、仲人が彼の中でブームみたいなのよ」と手を合わせられてしまうと、付き合ってあげるのも姪の役目な気がして、この半年で十二名の男性と会った。

最後にお会いしたのは…。


「ごめんなさい、私、緊張していて相手の方のこと、よく…」

「そうだろうと思って持ってきたよ。これ見たら思い出せる?」


コーヒーショップの片隅で、叔父がきれいな白い台紙を開いた。身上書だ。

お会いする前に私も見てはいるものの、あまりに立て続けだったので、正直どれが誰の情報か混乱している。


「肝心の写真がないじゃない」

「最初からついてなかったんだよ。でもほら、背の高い、朗らかな好青年だったよ、覚えてない?」

「みなさんそんな感じだったから…」


私は必死に記憶を探った。

どのお見合いも「形だけ」と聞かされていたので、失礼のないよう、楽しくやり過ごせればいいのだと、あまり相手に関心を持つこともなかった。

それは向こうも同じで、やむなく私と会っているのだとばかり思っていたのに。


「まあいいや、先方からはもう一度会いたいと話が来てる」

「それをお受けしたら、こちらも前向きって意思表示になるんだよね?」

「そりゃ、お断りするなら今が一番失礼がないね」


判断材料が少なすぎるよう。
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