最愛婚―私、すてきな旦那さまに出会いました
「そうだと思って、プランナーさんとの打ち合わせ、一時間ずらしてもらった。ちょっとここで一息ついてこ。ケーキでも食べなよ」


ふうふうと息を弾ませて、籐の椅子に腰を下ろした私に、彼がメニューを差し出す。受け取ったとき、目が合った。


「あ、腹いっぱい?」

「いえ、実はぺこぺこで」

「俺も今日は頭使ったから、糖分補給したい」

「あ、よかったら先に…」


ひとつしかないメニューを返そうとしたところ、にこっと笑って首を振られる。


「桃と同じの頼むから、さっさと決めて」

「ええ!」

「早くして」


優雅に脚を組んでふんぞり返ってらっしゃる。私は気が急いて、どれなら彼も喜ぶだろうと考えながら必死にデザートメニューのページを繰った。

ケーキ、パフェ、アイス…と目で追いながら、ふふっと笑ってしまう。

ねえ千晴さん。

幸せな予感しかないと思わない?




「お式の後、披露宴会場まではタクシーでご移動となります。スムーズにご移動いただくために、配車の台数とお乗りになる方をお決めいただきたく」

「なるほど、はい」


プランナーさんの話に、久人さんはすぐ胸ポケットからペンを出し、私に渡した。


「桃、この場で全部決められる?」

「はい」

「俺はちょっとデリケートなところあるから、持ち帰りたい。先決めて」


私は程よく持ち重りのする、けれどびっくりするほど書きやすい彼のペンを借りて、参列者を最大三名のグループに分け始めた。

しきたりというほどでもないのだけれど、代々続く慣習から、結婚式は迷わず神前式だ。むしろ悩ましかったのは、御園家と高塚家、双方にそれぞれ懇意にしている神社があり、どちらで挙げるかということだった。
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