暗闇のピアニスト



すると、手の甲に水が落ちて来た。

私は悟った…涙だと…。

『泣いてるの…?』

しばらくすると消毒液の匂いがきつくなった。

医者だ。

『ねぇ…誰か何か話してよ!黙ってないで…なんか…話してよ!』

私は薄々感ずいていた…。
耳の異変に…。

もとからあまり耳のよくない私だが、わかる…。

不気味な程何も聞こえない…自分の声も聞こえない…。

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