イケメンエリート軍団?何ですかそれ⁇
木の実は、自分の中で膨らみ過ぎていた風船が、パチンと割れた気がした。
この夢のような甘い話は、やっぱり夢だったのかもしれない。
木の実は静かにジャスティンを見た。
白馬に乗った私の王子様は、訳ありのイケメンエリートだったのね…
「帰るぞ」
ジャスティンは、パニックになっている木の実の手を引いて店を出た。
自分自身も木の実に何をどう話していいのか、考える気力もない。
とにかく、エレベーターが下に降りる間ずっと、木の実の手を強く握りしめるだけだった。
「お酒飲んだから、車はここに置いていかなきゃ…」
「…うん」
一応、木の実は返事をしてくれた。
「ちょっとだけ歩こうか…?」
「…うん」
ジャスティンは、木の実は普通の女の子で、今夜謙人が連れて来たような世間の表も裏も知ってる交際経験が豊富な女性ではない事を、今になって思い知らされた。
ゲイだったり、バイだったり、都会の遊びを知っている女性ならそんなに驚く事もないだろう。
でも、木の実は、純粋無垢で平凡な女の子だ。
調子に乗ってあの店に連れて行った俺が浅はかだったし、自分のセクシャリティを隠せればなんて思った自分が本当に情けなかった。
昼間は賑わっているこの大通りも、夜になると、また違った風景を見せてくれる。
でも、ジャスティンにとって、この夜の大通りを木の実と歩いている今の時間は、きっと、思い出したくない過去になるのだろう。